若き日の夢の地を後に

開陽台から。道東は今日も曇り空。


空っぽになった部屋、心の中でそっとお礼を言う。見送る人は誰もいない。そして、荷物でいっぱいの愛車に乗り込み、誰も急かしてやしないのに、人知れず、足早に町を去るーーー。短い期間だったとはいえ、住み慣れた土地を離れるのはやはり寂しいものだ。若い頃の北海道放浪で憧れ、ずっと想いつづけていた土地だっただけに、寂しさもひとしおだ、、、。
そう、いろいろと収穫はあったけれども、結局僕は、ここ道東で暮らしていくということにはならなかった。



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若き日に想い焦がれ、ずっと夢みていた。
北海道の東、どこまでもつづく、草原と霧と、酪農の大地。
誰も知らない、はるか遠くへ、最果てまでと、
地図も広げず、風のように彷徨い、そして辿り着いた地。
そんな僕の青春時代の夢は、やっぱりちょっと、未熟だったみたいだ。
だけど、その夢があったからこそ、
僕は今、ここにいる。

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なあに、車で5時間も走れば、いつだってこれるのだ。
ここは、北海道のどこよりもWILDで、生命力とWILDERNESSに溢れる地方。果てしなく霧につつまれる草原と丘、そして海。ケルト・ミュージックのよく似合う場所。僕の初恋の土地。
恋しくなったら、どこか遠くに行きたくなったら、
埃だらけの、古ぼけた記憶が懐かしくなったら、愛おしくなったら、、、
ふらりとまた来るさ。
それに、釧路湿原も、知床も、流氷も、まだ全然見れてないし!



思えば、世の中ずいぶんと便利になったものだ、、、
僕が北海道を放浪したあの頃、コンビニも、ビジネスホテルも、
パソコンも、インターネットも、携帯電話もなかった。
だから、人とのふれあいが、もっと心地よく、暖かかった。
そして、誰もが優しく、強く、厳しく、
そしてなにより謙虚だった。




牛の世話ができなくなるのも、やっぱり寂しいなぁ。
牛はとってもやさしくて、かわいい。また戻れるといいのだけど。



さあ、僕は帰る。大好きな美瑛へ。
そして、僕の北海道移住の冒険のプロローグは、これでおしまい。
パーマカルチャーに根ざしながら、自然環境や生きものたちとともに穏やかに生きていく、僕の「スローライフ ✳︎ 北海道」
いよいよこれから、本編のはじまりだ。