もし生きものたちがいなかったら



トマトの収穫がだんだんと忙しくなってきた。何十棟とあるハウスのいくつかでは、1段目2段目のトマトが赤くなりはじめ、収穫適期を迎えている。町の選果場には、各地域の農家さんから出荷されたトマトが続々と入ってきている。最盛期には、朝から晩までひたすら収穫作業を続けることになるだろう。

収穫をしていると、いろんな生きものたちの鳴き声や音が聞こえてくる。エゾハルゼミの涼しげな鳴き声、スズメやウグイスの可愛らしい鳴き声、ヒバリの賑やかな鳴き声、カッコウの透き通った鳴き声、カラスの挑戦的な鳴き声、トビの切ない鳴き声、アオバトの奇妙な鳴き声、エゾシカの鳴き声や、風にそよぐ草木や川の音も聞こえる。

もし生きものたちがいなかったら、彼らの鳴き声や音が聞こえない世界だったら、どんなに寂しいだろう。彼らがいるのが当たり前すぎて、僕らはそのことを忘れる。そして傲慢になる。そして、彼らや自然の怒りを目の当たりにし、やっと思い出す。そしてまた忘れる。いつもいつも、その繰り返しなのだ。

僕ら人間という種は、バックミンスター・フラーよろしくこの「宇宙船地球号」の新参者で、いちばん若く、いちばん未熟な乗組員なのだ。そして、彼らのほうが大先輩で、はるかに賢く、この地球での暮らし方をはるかに熟知しているのだ。人間がいちばん優れている?いちばん優秀な種が、同族で無益な争いや殺し合いなどするだろうか??人間同士のルールは遵守し、大地のルールはことごとく無視するだろうか??地球の「完全なる循環」から逸脱した生活を送るだろうか??彼らからすれば、僕らはとっても厄介な新入りなのだと思う。

僕らは地球と生きものたちに生かされている。
生きものたちは僕らの永遠の先生なのだ。
僕ら人間がそのことを
忘れようとも、目を背けようとも、逆らおうとも、
その真理だけは、いつでも、すぐそこにある。