ゴンドアの谷の詩

ゴンドアの谷の詩



美瑛に初雪がきた。これからぐんぐん寒くなり、大雪山連峰の山々も、空も、丘も、町も、すべてがモノクロームに染まっていくだろう。雪につつまれた白銀の静寂と、凛とした凍てつく冷気と、暖を焚く匂い。僕のいとおしい季節であり、はじめて美瑛にやってきた季節でもある。


道東から美瑛に帰ってきてもうすぐ3ヶ月がたつ。なんとか冬前に、落ち着いて暮らせる住まいも決まった。歯ブラシやタオル、食器や調理器具の置き場所だったり、コーヒーを淹れたり、冷蔵庫から食べものを出したり、フライパンをコンロにかけたり、テレビを点けたり、、、そんな日々の暮らしの何気ないふるまいも、だんだん熟れてきた。北海道・美瑛にやってきてもうすぐ2年、いままで[FOREIGNER]ーーよそ者だった自分も、よくやく北海道の、美瑛の人間になりはじめられたかな。そんな気がしている。


だけど、、、これでエンドロールじゃない。(もちろん!)
ようやくプロローグが閉じ、本編の第1章がはじまったところなのだ。冠雪の山々に抱かれた、煙突のある小さな家の庭先で、黙々と薪割りをする草臥れた男ーーーそんな僕自身の理想像が、ぼんやり見えるようになってきた。ここから、僕のめざすスローライフに向け、ずんずん進んでいくのである。


✳︎


いつの頃からか、僕がたいせつにしてきた詩がある。
誰もが知っているジブリ・宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」に登場する詩だ。




「ゴンドアの谷の詩」


土に根をおろし
風とともに生きよう

種とともに冬を越え
鳥とともに春を謳おう


Put down your roots in the soil.
Let us live together with the wind.

Pass the winter with the seeds,
sing in the spring with the birds.




いままでいろいろあった。誰もがそうであるように。
だけど結局、いつも僕はこの詩にもどってきた。
どんなに目を逸らしても、逃げても、偽っても、踠き足掻いても
この詩は、しずかに、いつも僕に寄り添ってくれていた。


僕の人生の真実はすべて、この詩にある。
だから、どんなときも僕は、この詩とともにある。
これまでも、そしてこれからも。