春のアネモイは気まぐれ 〜僕の心に暮らす、ロマの少年〜




 だいぶ暖かくなってきたかと思いきや、ここ数日はけっこう冷える。春の風の神たち【アネモイ】は気まぐれだ。ゼピュロスは毎日コロコロ気が変わるし、ボレアスもまだ名残惜しそうに居座っている。今日はエウロスがちょっかいを出していて、ノトスはまだ遠くにいる。こういう日は、、、


✳︎


、、、そう。
こういう、ちょっぴり憂鬱な日は
どこからか、ジプシーの声が聞こえてくる。
いつも、、、昔からそうだ。
彼は、ずっと僕の友達。
僕の心に暮らしている、ロマの少年。
寂しくて、懐かしくて
けだるくて、幸せな
僕の心に感づいて
気がつくと、僕の隣に座っている。
足をブラブラさせながら、無邪気に微笑み
そして、僕に囁くんだ。
「ねぇ、どこか遠くに行こうよ」
僕が黙っていると、君はふてくされる。
そして、一緒に眠りに落ちて
なんとなく、今日が終わる。
明日になれば、君はもういない。
今度はいつ会えるのか
書き置きもなしに。


✳︎


、、、今日は、大好きなCharlie Haden & Pat Methenyの「Beyond The Missouri Sky (Short Stories)」を、ずっと聴いていたい気分だ。